始めての欧州一人旅

◆◇欧州からの文化の風【日本の未来のために】◇◆No92:始めての欧州一人旅
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      ヨーロッパの魅力にとりつかれたのは、
         15年前の95年冬の一人旅
 1度吸い込んでしまった「個人主義と自由の空気」は、忘れられない

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15年前の95年末の冬。突然、心の中にもたげてきた、「パリに行きたい!!」
という衝動的といってもいい気持に抗しきれず、私は年末年始の10日間の、
パリへの一人旅に、旅立ちました。
それ以来、その時吸い込んでしまった、欧州という場所がもつ、その独特な
個人主義と自由の空気」
の魅力の虜になってしまい、以後、時間とお金をやりくりして、毎年のように、
欧州へ、一人旅をせずにはいられない身に、なってしまいました。

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15年前の95年の年末、例年になく、クリスマスから翌年の1月10日まで、
比較的長い仕事の休みがとれた私は、東京の自室で、もんもんとしていました。
社会人になって以来、ずっと仕事は忙しく、海外旅行をするなどということ
なんて思い付きもしない、典型的な日本のサラリーマン生活に没頭した生活を
送っていました。
歳はもうすぐ30歳目前という頃で、久しぶりの長期休暇のクリスマスを、
東京の冬の空を見上げて過ごしながら、
「こんな、ただ、忙しい仕事がいつまでも繰り返すだけの毎日でいいのかなあ」
と、ちょっとブルーな気分で、考えていました。
なにか、「余裕」とでもいったようなものが、欲しかったのかもしれません。

そんな時、東京のクリスマスの空の下で思い出していたのは、大学4年生の頃に、
友人と旅した、「1ヶ月間の欧州一周鉄道の旅」でした。
ホテルの予約をせずに、ユーレイルパスを使って、1都市2泊程度を目安に、
欧州大陸を気ままに行き当たりばったり、様々な国と都市を、周ったのです。
フランス、スイス、イタリア、オーストリア、ドイツ、オランダ、
どの国も都市も、それぞれに素晴らしく魅力的だったのですが、一番印象に残っ
ていたのは、フランスのパリでした。

「パリに行きたい!!」
そんな気持が、いつしか大きくなってきて、抑えきれなくなっていました。
12月27日、旅行会社JTBのカウンターへ、旅の具体的な予定も立てない
まま、ただ「パリに行きたい!!」という気持だけで、足が向かっていました。

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「うちは今日の12月27日までが年末の営業なので、航空券の手配はできない
ですね。HISさんだったら、明日までやっているから、尋ねてみては。」
と、格安航空券で有名な旅行会社HISを紹介してもらい、知ることになった
のは、9年前です。
すぐに、旅行会社HISのカウンターへ。
「パリに行きたいんですけど。」
「いつからですか?」
「今すぐ。明日かあさって。」
今思い出すと、ずいぶん、無計画で横暴ともいえる旅計画(無計画?)でしたが、
旅行会社のカウンターは、飛行機の空席を、その場でパソコンで探してくれました。
「飛行機は、大韓航空が1人なら空席がある。ホテルの予約は、確認の手続きが、
最低3日は必要なので、今年は無理」、とのこと。
「じゃあ航空券だけで。」

ということで、ホテルの予約はなし、久しく喋ったことがないカタコト英語を頼りに、
パリへの一人旅を、その場で決めました。

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晦日、12月31日の夜17:00に、パリのシャルル・ドゴール空港に、降り立
ちました。
1人で降り立つのは、始めて。
冬なので、日が短いパリは、もう、真っ暗な、夜。頼りになるのは、飛行機の中で読ん
だガイドブック「地球の歩き方」の情報だけ。
空港から市内へは、2本出ているバスか、鉄道が便利というのは、にわか勉強の情報。

空港で荷物を拾い、到着ロビーへのドアを開けて外へ出れば、そこは、もう、外国。
飛行機には、日本人が大勢乗っていて、日本気分でいられますが、荷物を拾って、到着
ロビーへのドアを開けて出た外は、多民族国家、フランス。日本気分は、吹っ飛びます。
肌の色が様々な背の高いアラブ人、黒人、白人が行き交う世界に、1人、飛び込む。
治安も日本のように良くはない。言葉の不安。読めないフランス語の看板。始めての
一人旅ゆえに、当時はかなり、緊張しました。

市内へ向かうバスの乗り場を、カタコト英語で尋ねて探していたら、1時間近く費や
してしまいました。
「エアーフランスバス」というシャトルバスで、市内へ向かうことに。乗客は満員で、
立ったまま、冬の夜の暗く、かすかな明かりの灯るパリの外環高速道路沿いの風景を、
眺めていました。
しかし、バスがパリの「どこ」に向かっているのか、自分で分かっていませんでした。
見たことがない場所に、バスは停車して、人を降ろしては発車し、次の停車場へと向
かいます。
3つめの停車場が、ライトアップされたエトワールの凱旋門でした。
そこで降りることに決める。
メトロの地下鉄駅に入り、回数券のカルネを買って、ホテルが集まっているポンピドー
センター近くの駅、シャトレまで、メトロ1号線に乗って、行きました。
晦日のメトロは、満員の乗客でした。

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シャトレ駅から地上に出て、ホテルを探すことに。
ところが、2つのホテルを尋ねても「満室」。
大学4年生の頃の1ヶ月間欧州一周鉄道の旅ではこんなことなかったのに…。
さすがの私も、焦り始めました。
時計を見れば、もう、夜の20時半。
厚手のコートとマフラーを着ていても、こごえるほど寒く、見れば、道の上では、
ホームレスが、地下鉄の排気口からの温風に当たって、暖をとっている。

3件目のホテルを尋ねたけど、「満室」。私が困ったそぶりを見せると、
フロントのおじさんが「近くに知り合いのホテルがある。空いているか、聞いて
あげましょう」といって、電話をかけてくれました。
「部屋があるようだ。私の息子が案内します」、とのこと。
あの時ほど、救われたという思いに感謝した思い出は、今思うと、なかなか
ありません。
息子さんが案内してくれたのは、三ツ星の、洒落た小奇麗なホテルでした。
お礼のチップを渡そうとしたけれど、息子さんは「いいから」といって、受け
取りませんでした。
ともかく、感謝、感謝でした。

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後で分かったのですが、パリで新年を迎えるために、大勢の人たちが、ヨー
ロッパ中から集まってくる習わしがあって、大晦日は、パリのホテルは満室に
なるようです。
空室を見つけることが簡単な欧州のホテル事情も、年末年始だけは、注意が
必要なようです。

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15年前の95年冬の、始めての欧州一人旅は、おっかなびっくりなことばかり
でしたが、1週間、フランスに滞在。
アクシデントがあっても、出会ったホテルの息子さんのような人に助けられた
思い出や、街を歩く中で、出会った様々な出来事やフランスのエスプリに、私は
すっかり、ヨーロッパの魅力の虜になってしまいました。
個人主義でプライドが高いという印象のフランス人ということがよく言われま
すが、その懐は深く、触れ合ってみれば、その個人主義と自由の空気は、とても
魅力的です。
何回か旅を重ねてみると、そういった彼らがつくっている欧州の社会も、魅力の
ある制度や習慣の特徴をたくさんもっていることがわかってきて、毎年のように、
欧州へ、一人旅をせずにはいられない身に、なってしまいました。

良くも悪くもグローバリゼーションの時代と言われる21世紀を生きていくこと
になる日本人にとって、欧州の社会から日本が学べることは、たくさんあるような
気がしてなりません。

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