ロンドンの小天使

◆ ◇欧州からの文化の風【日本の未来のために】◇◆No.96:ロンドンの小天使
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            ロンドン
        ウオータールー駅の小天使
     
      
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海外旅行に行くときは、いつでも飛行機。
まあ、あたりまえの話ですが。
しかし、英国のロンドンへ行くときは、飛行機でヒースロー国際空港から入る
よりも、パリから出発する国際高速鉄道ユーロスター」に乗って、英仏海峡
ユーロトンネルを渡って、ロンドンにアクセスする方が、なんか、お洒落な
ような気がする。

私が始めてロンドンに行った時も、パリの北駅 Gare du Nord から「ユーロ
スター」に乗って、ロンドンのウオータールー駅 Woterloo に入りました。

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英仏海峡トンネルが完成し、パリの北駅と、ロンドンのウオータールー駅が、
高速鉄道によって結ばれるようになったのは、94年です。

北駅には、「ユーロスター」専用のチケットロビーと乗り場があって、
「これに乗れば、3時間半で、ロンドンだ」
という予感には、国際統合されたEUヨーロッパという、欧州の未来のイメー
ジには、思わず胸が高まる気分にさせられる。

ユーロスター」は、フランスとイギリスという、鉄道の建設基準が違う国土
を走ることができる車両として開発されたTGVの新型車両で、もちろん、ブ
ランド路線。車両の内装インテリアは、赤を基調にした、シックで、ゴージャ
スなデザインで、座席のシートは日本の新幹線とは桁違いなほど広く、快適な
乗り心地を楽しめます。

どちらかといえば、平らに広がる風景のフランスの田園地帯を走り、英仏海峡
トンネルを抜けると、起伏の多い、イギリスの田園地帯を走って、3時間半で、
ロンドン側の玄関駅、ウオータールー駅に着きます。

ウオータールー駅のユーロスター専用乗り場のターミナルは、94年のユーロ
スター開業に合わせて建設された新しいもので、イギリス人の建築家、ニコラス・
グリムショウによる設計。ゆるやかな曲面を描く駅のプラットフォームを覆う、
大きな透明ガラスと青いチューブトラスが組合わせられた、軽快な屋根のデザ
インは、明るく開放的で、現代の駅舎の斬新なデザインとして、有名です。

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列車を降りた乗客は、高架のガラス屋根のプラットフォームから、長いスロープ
に長蛇の列をつくって、天井の高い1階のコンコースまで、ぞろぞろと降りる。
天井の高い、白いコンクリート打放しの明るくて広いコンコースのあちこちには、
英国特有のネイビーブルーの制服を着た駅員や、警備の係官がいて、ちょっとし
た緊張感を感じさせられる。さっきまでいたフランスのパリとは、いかにも違う
風景です。
「BRITAIN=英国に着いた!!」
思わず、そんな感慨の気持ちにさせられます。

乗客が並んで待つゲートで、パスポートのチェックを受け、ネイビーブルーの制
服を着た入管の係員に、「ガチャンッ」とパスポートに入管印を押してもらえば、
ロンドンWelcome!!です。

以下、「ユーロスター」が見れるサイト。
http://ww1.tiki.ne.jp/~yokoura/honeymoon/20010418.HTML
http://www.kcc.zaq.ne.jp/konoha_kiri/BLE/Eurostar.html

以下、ウオ−タールー駅が見れるサイト。
http://www.joyphoto.com/japanese/abroad/1999Europe/london/water.html
http://www.mediawars.ne.jp/~tanimura/a_map/foreign/form/england/waterloo.html

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ウオ−タールー駅からは、地下鉄に乗り換えて、ロンドン市内の目的の場所に向
かいます。
ロンドンの地下鉄は1863年に、パリの地下鉄METRO、ニューヨークの地下鉄
SUBWAYに先立ち、世界で一番最初に建設された地下鉄として有名です。
路線数は14、駅の数は478,総延長390kmに達する,ロンドンの地下鉄は、その
総延長距離でも、世界一。
市民から“UNDERGROUND”、あるいは大部分がシールド工法で建設され, その
断面が円形であることから“TUBE:チユーブ”とも呼ばれ、親しまれています。

ロンドンの地下鉄は、まさしく“TUBE:チユーブ”です。駅もシールド工法で建設
されていて, その断面が円形。長くて、狭くて、丸い筒型の屋根のホームで、列車を
待ちます。
列車は、細い「チューブ」の中を走れるように設計されているため、日本やパリの
地下鉄と比べて、驚くほど小さい小型の車両。筒状の丸い断面のトンネルの形に合
わせて車両の屋根も扉も、上の方が斜めになっている。
まさしく、細いチューブから押し出されるように、車両が駅のホームに滑り込んで
きます。見ていてとても窮屈そう。でも、丸くてかわいらしい車両です。


地下鉄でロンドンを見て回るには、トラベルカード Travelcard と呼ばれる、乗り
放題の周遊券を利用するのが安くて便利です。1日券、1週間券など、種類はいろいろ。
これは、自動販売機で購入します。
しかしこの自動販売機、初めての旅行者には、使い方が分かりにくい。
コインとガイドブック片手に、動かない自動販売機と格闘していたら、同じ歳位の
ジーンズを履いた男性のバックパッカーの旅行者に、声をかけられました。

「俺は今日がロンドン最後の日なんだ。You、これでロンドンが楽しめるよ」
と言って、3日分の有効期限が余っているトラベルカードを、私に差し出してきました。

こういうかんじの見知らぬ人同士のやりとりは、欧州を旅行していると、よくあります。
日本では、なかなかない習慣です。
見知らぬ隣人同士であるからこそ、ジェスチャーを出して、知り合い、お互い助け合う
という感覚の習慣は、気持ちがよいものです。
とっさにそう言われて、真意をつかみかねて突っ立っていた私に対して、彼は私の手に
トラベルカードを握らせると、

「ロンドンはいいところだよ。楽しめ。じゃあ、Good Luck !!」
と言い残して、去っていきました。

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似たような出会いに、先日、東京の品川駅であいました。
夜の8時くらいの時間だったでしょうか、品川駅の券売機の前で、ぼーっとして立
っていた私の前に、12歳位のラテン系の少女が歩み寄ってきて、

「ワタシ、アナタにこれ、あげます。アナタ、これで家まで帰れます」
とたどたどしい日本語で言って、JRの1日券を差し出しました。
連れがいた私は、
「いや、いいです」
と、条件反射的に、言っていました。その少女は、ムッとした顔をして怒ると、
1日券を券売機の前の床に叩きつけて、去っていきました。

日本人感覚でいたために、条件反射的に彼女の申し出を断ってしまった私は、
どうやら、彼女の善意の気持ちを、踏みにじってしまったようでした。
今でも思い出すと、とても残念な気持ちになります。「隣人愛」に無頓着な日本人
感覚は、どうもいけないなあ、と振り返って思います

ロンドンで出会ったバックパッカーが、小さな天使だとしたら、
日本には、小天使は、どうやら、どこにも、いないようです。

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以下、ロンドンの地下鉄、TUBE=UNDERGROUNDが見れるサイト。
http://www.ne.jp/asahi/tabitabi/train/lonS.htm
http://www.ne.jp/asahi/tabitabi/train/tube.htm
http://www.f-banchan.net/travel/underground/underground1.htm
http://www.asahi-net.or.jp/~QN4H-UN/TravelG7-A3-London2.htm

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この記事を書いたのは、2004年、欧州からの文化の風の創刊1年後の頃です。
当時のユーロスターのロンドン側の玄関駅はウオータールー駅でしたが、
2007年の11月から、ロンドンの北側にあるセント・パンクラス駅に移り
ました。
開業当初のユーロスターはイギリス国内では在来線を走っていたため、メルマ
ガにもあるとおり、起伏のある地形の中でスピードを上げて走ることができな
かったのですが、2007年に高速専用路線が開通し、パリ北駅との間を2時
間半で結ぶようになりました。
この高速専用線の開通に伴い、ユーロスターのロンドン側の玄関駅はセント・
パンクラス駅に移ることとなりました。

しかしこのセント・パンクラス駅は、新駅ではなく、19世紀の1868年に
開業したロンドンの由緒あるスイッチバック式のターミナル駅で、建築的にも
とても素晴らしいもの。
19世紀の産業革命期の建築を代表する、とても天井の高い鋳鉄製トラスのガ
ラス屋根が架かった駅舎で、その無柱の長大な鋳鉄製アーチは高さが37M、ス
パンは30M、長さは210Mもあります。
この大屋根の設計はウイリアム・バーローによるもの。
駅の正面の顔であるネオ・ゴシック様式のホテルもまた素晴らしいもので、こ
ちらはジョージ・ギルバート・スコット卿の設計によるもの。

始めてロンドンに行ったとき、まさか将来ユーロスターのロンドン側の玄関駅
になるとはつゆとも知らなかった私は、チューブを乗り継いでセント・パンク
ラスの駅舎を見に行きました。
広大で巨大な大屋根がかかる下に並ぶ在来線の列車がとても小さく見えて、
150年前に完成した鉄とガラスの大空間の向こうに、19世紀の人が夢見た
であろう未来の時代へのロマンを感じ取ったような気がして、とても感激した
ことを思い出します。

ユーロスターに乗ってロンドンについた折には、ちょっと足を止めて、そうし
た歴史を持つセント・パンクラス駅を見て回ってみることも、素晴らしいロン
ドン滞在体験になるかもしれません。

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